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「海峡の光」辻仁成

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「海峡の光」   ・・・・・#1407


廃航せまる青函連絡船の客室係を辞め、
函館で刑務所看守の職を得た私の前に、あいつは現れた。
少年の日、優等生の仮面の下で、
残酷に私を苦しめ続けたあいつが。
傷害罪で銀行員の将来を棒にふった受刑者となって。
そして今、監視する私と監視されるあいつは、
船舶訓練の実習に出るところだ。
光を食べて黒々とうねる、
生命体のような海へ・・・
海峡に揺らめく人生の暗流。
芥川賞受賞。
(文庫本表4・解説から)

「中村獅童さん出演で、初の舞台化」という新聞広告が目に止まり
ちょっと興味が湧いて予約した本です。
因みに脚本・演出は辻さんご本人だそうです。

辻作品といえば「冷静と情熱のあいだ」をはじめ、他数冊を読んでいましたが
本書を読みながら改めて文章表現がきれいで驚きました。
なんていうか、品があるというか、上質の文章。

自分の文とは正反対のものに惹かれる?
てか、そもそも同じ次元に並べるなっー!って話ですけどm(_ _;)m


その美しい文体で「私」と、「私」が意識せざるを得ない花井の様子が、
過去と現代を行ったり来たりしながら丁寧に描かれていきます。
廃航になる青函連絡船が背景になってるってのも良かったな。

しかしながら、その内容は
なにか起こりそうなんだけど、結局なにも起こらない。
花井とのことにしても、「私」の火遊びのことにしても。
ラストも余韻のある終わり方といえるけど
へっ、これでおしまいかーって感じのほうが大きかった。

スリルとサスペンス、小説には大いなる起伏を求める者としては
ちょっと肩透かしを食らったような、ではありました。
この小説にそういうことを求めてはいけないのね。

やっぱり「サヨナライツカ」とかの方が好きだな。





by noro2happy | 2014-03-16 17:49 | book

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★★★☆「サヨナライツカ」
原作:辻仁成
出演:中山美穂、西島秀俊、石田ゆり子
監督:イ・ジェハン(「私の頭の中の消しゴム」)

試写会会場は有楽町のヨミウリホール。
ものすごく大昔に来た記憶があるのですが、こんなに広かったけ?
そごうからビッグカメラになったとき、改築したのかしら?
いずれにしても古い話ですが。
このホール、試写会には向いていないのでは?
始まりから音が割れてビックリしました。
その上、席が廊下に近かったせいか、非常口のランプやどこかから漏れてくる光がなどが明る過ぎました。

さて、そんな会場への不満から入った映画ですが。
連れのOSは原作未読、ワタシは読んだ派(原作感想はこちら)
見終わった感想は二人ともほぼ同じ。
最高に切ないラブストーリーってより、身勝手な男に振り回された二人の女の切なさよね。

原作でも、官能の世界に引き込まれて遊びたいだけ遊び、いざとなったら安全な道を選び、出世コースを歩んでいく小っちゃい男だと思いましたが。
映画はさらにそれを再確認しただけでした。
2010年最初の涙、ってどこで泣けるのか。

ここからはネタバレです。
原作と映画の違いなども記していますので、来年観ようと思っている方は、スルーしてくださいね。

一番の違い。
原作では、光子は沓子の存在を知りません。
おそらくは結婚後周囲のウワサで知ることにはなるのでしょうが、そのあたりも明らかにしていません。
したがって光子がわざわざバンコクまで出かけ、沓子と「対決」するというのは映画のオリジナル。
どうしてこういう設定にしたのかわかりませんが、考えてみれば、したたかに牙をむくお嬢様の存在のほうが、リアリティはあるかもしれません。
ですが、原作の持つ自由奔放で何事も恐れないミステリアスな沓子のカリスマ性は失われてしまっています。

2番目の違い。
沓子は豊と別れた後、ニューヨークではなく東京で暮らしますし、バンコクに戻ってきても、ホテルに住んでいるのではないし、亡くなった場所も自分の家。
東京での暮らし、彼女の心情、またホテルで働くに至る理由もよくわかります。

映画では思い出の最高級スイート「サマーセット・モーム」で終始一貫していますが、なぜVIP担当としてホテルで働いているのか説明がない。
また、ホテルの好意とは説明していますが、いち従業員をスイートに住まわせておくのはとても不自然でした。

ほかにも細かい部分をあげれば数々なのですが、原作では夢のような、ファンタジックな部分が魅力でしたが、映画は逆に男の身勝手さがリアルに出てちょっと引いてしまいました。
結婚式のシーンは有り得ないし。

結論として「私の頭の中の消しゴム」のほうがよかった。


ミポリンは確かに美しいですが、原作の持つミステリアスな雰囲気というより、やっぱりかつてのアイドルが大人になったって感じ。
男をとりこにするにはちょっとやせ過ぎって気も。

余談ですが、サングラスをかけた西島クンとミポリンのツーショットが、時々ウッちゃんと岸恵子に見えて仕方ありませんでした。
by noro2happy | 2009-12-26 22:52 | 映画

サヨナライツカ

c0096685_2214697.jpg★★★★
もうこの年になると、自分自身が愛だの恋だのって、一喜一憂することは永遠にないと思ってしまう・・・
そりゃあ、かつてのようなときめきを感じたくないのかって言えば、ウソになる。
一方、そんな感情を七面倒臭いと感じているのも本当。
でも、こんな恋愛物語を読むとなんか照れくさくも、自分を置き換えてみたりして、ひと時の夢を追いかける。

辻仁成著:サヨナライツカを読みました。
来年早々、奥様の中山美穂主演で映画上映されるんですよね。
その原作本。
友達が「泣けるよ~」ってコメントつきで貸してくれました。
バンコクが舞台っていうのもいいわぁ。

「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと愛したことを思い出すヒトとにわかれる。
私はきっと愛したことを思い出す」
内容はこの言葉につきます。
たった4ヶ月の恋がその後の忘れられない日々となる。053.gif054.gif053.gif054.gif
一生をかけての愛がテーマなんだけど、ワタシは男の気持ちがよく分からない。
一見苦しんでいるようだけれど、アンタはいいよねー。
冷ややかな目で見てしまう。
男が男を描いているんだから間違いないでしょう。
男の愛なんてこの程度さ。

“好青年”は婚約者がいながら、沓子の奔放な魅力に屈し、激しく狂おしい日々を過ごす。
やがて二人は別れをを選択するが、25年後、愛をはぐくんだバンコクで再会する。
ないものねだり、夢みる夢子さんとしては、やっぱりちょっとあこがれる恋愛物語です。
あ~~~矛盾していることは重々承知でやっぱ、泣ける。

沓子と別れた好青年は、何事もなく妻をバンコクに迎えたり出来たんだろうか。
これは、本人たちというより、事情を感ずいていた回りの人たちともモロモロ・・・
そのあたりの不自然さを映画は描いているのかな。
不完全燃焼がしっかり描かれているのなら、やっぱり映画を観てみたい。

バンコクのオリエンタルホテル、ぜひ行ってみたいわぁ。

で、あなたはどちら?
最後に思い出すのは。
愛したことか愛されたことか・・・
by noro2happy | 2009-11-07 22:09 | book

『右岸』と『左岸』

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★ ★ ★ ☆

夕べは、というか、正確には今日ですが、妙に目がさえてしまい、結局夜中の3時ごろまで読書タイムとなってしまいました。
辻仁成さんの『右岸』と江國香織さんの『左岸』
ようやく読了。
どぅほぉぉ~~~っ、疲れたぁ。
久しぶりにズッシリきましたねぇ。
いや、内容というより総文章量においてだけど。
2段組、左右あわせると1000ページにも及ぶわけでして。
読みでがあったわぁ。

辻・江國コンビといえばもちろん「冷静と情熱のあいだ」ですよね。
愛し合いながらも離れてしまった男女の心の動きを、それぞれの側から綴ったラブストーリー。
竹野内豊とケリー・チャンで映画にもなって。
こん時のタケタケがまた素敵でさぁ~☆☆☆016.gif 016.gif 016.gif
いかん、話がそれそうだ。
今回もそんなのを期待していたら、まったく違うものでした。

『右岸』では特殊な能力を持った男性「九」の半生を描いているのですが、霊魂とか輪廻とかっていうスピリチュアルな世界。
それはそれなりにおもしろく読めたのですが、ラブホテルの屋上が森になったり、宙に浮かんだりするあたりから、あまりにも現実離れしてしまって。
おまけに、酒の飲みすぎで太ってひげも髪もぼうぼうって、どっかで見たような・・・?
ビジュアル的にはまるでショーコーじゃない。
ちょっとうーん、て感じになってしまいました。

一方の『左岸』は九の幼馴染みであり、ずっと思いを寄せていた女性、「茉莉」が主人公。
その男性遍歴を含め、「チョウゼンとしていればいい」という生き方がとても印象的です。
どちらを先に読むかというところですが、ワタシは右岸から読んだので、人物関係などが良く分かったように思うのですが。

「冷静と~」では辻さんのほうが好きだったけど、今回は江國さんの方が面白かったかな。
期待が大きかっただけに、両方合わせて星3.5個ってとこで。
全編を通じての博多弁がなんとも言えない味を醸し出しています。
by noro2happy | 2009-02-24 21:39 | book

会社の帰りに図書館へ寄りました。
「身の上相談」も読んじゃったし、予約の本もまだ来ていないし、なんか見繕ってくるかってことで。
家には途中で放り出したハードカバーの本があるのですが、イマイチすすまない。

先日のミシュランで辻仁成さんの本を思い出し、何となく手にしたのが「サヨナライツカ」(平成14年7月初版)。
かなりの人手を渡って書架に納まったらしき文庫本でしたが、ペラペラと見ていたら、どうやら舞台がタイみたい。
バンコクでの恋愛ものかなぁと、ちょっくら興味がわき、借りてきました。
辻さんの文体はワタシの感性に合うのか、サクサクページがはかどります。
寝る前とかに軽く読み流すのにちょうどよさそう。

アジアで一番といわれているオリエンタルホテル(実はワタシも憧れの宿、いつか泊まってやろうと思っております)で逢瀬を重ねる二人。
男性には、日本で待っている婚約者がいるのですが・・・
なんてところまで読んでいたら、文中に
「このホテルが世界中に大勢のファンを持っているのはね、まさに心のこもったもてなしにその理由があるんだから。ここのジェネラルマネージャーを頂点に、ドアマンに至るまで、全員がホテルマンとしての最高の誇りと確固たる自覚を持っている。だから、ここに泊まりに来る人たちはいつも家に戻ってくるような温もりを味わうことができるのよ」(抜粋)

・・・あらら~、どこかで聞いたような。
ムムッ、これはまさに加賀美屋さんが散々言っていたことじゃありませんか。
久しぶりに夏美さんの顔が浮かびましたよ。
あの脚本を書いた人は絶対この小説を読んでいたと確信したのですが・・・
by noro2happy | 2007-11-27 23:52 | 日々のこと

東京ミシュランガイド

昼間は結構暖かかったみたいですが、夜になってすごく寒くなりました。
少し前に帰ってきたのですが、真冬の凛とした寒さを思い出しました。
風が強いせいか、月は煌々と輝き、星もよく見えてきれいでした。

星つながりというわけでもないのですが、ここ数日話題の「東京ミュシュランガイド」、あれが気になるんですよね。
日本人とヨーロッパ人の5人の覆面調査員が1年半かけて訪ね歩いたそうで、盛り付けの見た目や味のほか、食材の鮮度、仕込みの度合いなどによって星の数を評価しているとか。
料理評論家の山本益博さんは、三つ星を獲得すると間違いなく3ヶ月先まで予約で一杯になるし、外国のお客さんがどっと増え、海外からファックスがどんどん入るって言っていました。
当然、何であそこがと、異議を唱える人も多々いるようで、本当のところはどうなんでしょうね。
まぁ、我々下々には、一生縁がないレストランではあることだけは間違いない。

三つ星レストランについては、だいぶ前に読んだ辻仁成さんの「今この瞬間愛しているということ」という本を思い出しました。
パリの三ツ星を目指す料理人ジェロームと、料理評論家、それにミシュランの審査員ブノアという三人の男と、日本人初女性で三ツ星シェフになることを目指している女性ハナの、運命の恋を描いた作品です。
舞台が舞台だけに、かなり詳しくミュシュランのことが書かれていて、それもすごく興味深かったです。
たしか、ミシュランの審査員って、家族にも自分の職業を明かさないというようなことが書かれていたと記憶しています。
まるで、CIAのスパイですよね。
フランス料理とワインが飲みたくなること間違いない、お奨めの本です。
悲しくステキなラブストーリーでもあります。
by noro2happy | 2007-11-21 23:53 | 日々のこと