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新刊で遅れを取っているので
そこそこ古いものの中から良さげなものをピックアップ予約している今日この頃。
読みたいときにすぐ読める利点。


上下巻の結構なボリュームでありましたが
スピード感とドキドキで、やめられない止まらない。
最後まで、どうなるの?どうなるの?で落ち着かず、
ほぼ1日で読み終えてしまいました。
大藪春彦賞、吉川英治文学賞、日本推理作家協会賞の
トリプル受賞作品です。

過酷な生活を強いられた南米移民の生き残りたちが
日本国家を相手取って起こす復讐劇。
そんな昔でもない、たった55年前の話しなのに
知らないことがいっぱいありました。


政府の募集で夢膨らませブラジルに渡った衛藤と妻、そして彼の弟。
しかし、当初の約束とは大違い。
騙されたように連れてこられたのはアマゾンの奥地。
開墾も出来ない土壌とマラリアや黄熱病との闘いに破れ
移民たちは次々と命を落としていきます。

衛藤も妻と弟を亡くし、入植地を出ることを決意します。
絶望と貧困の放浪生活の末、なんとか身を立てた衛藤は
かつての仲間・野口を訪ねるため入植地へ戻ります。
しかしそこに居たのは野口の幼い息子ケイだけ。
野生児のような姿で一人で暮らしていたのです。

十数年後、思いを共有する衛藤、ケイ、松尾、山本の4人は、
呪われた過去にけりをつけるため
日本政府に対する復讐劇を開始します。
それは移民政策の当時の責任者を人質にし、
政府にある要求を突きつけることでした。

テレビ局の外務省担当記者・貴子を巻き込み一気に加速。
とにかくケイのキャラがたっていて
娯楽性はほぼこの人のお陰かも。
サンバとカーニバルのお国にしても、チャラ過ぎだよ。
しかも前半と後半では別人のようになってしまってるwww



虐げられたものが国家に一泡吹かせようってところで
奥田英朗さんの「オリンピックの身代金」を思い出しましたが
なんだろう、それよりはずっと砕けた感じ。

過去と現在、日本と南米
それぞれが交錯する中、山あり谷あり。
棄民、復讐劇とヘビーなテーマの割には爽快でした。
オススメの一冊です。





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by noro2happy | 2016-09-18 17:40 | book

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アフリカ篇、御巣鷹山篇、会長室篇の
全5篇からなる超大作を読了。

ただいま絶賛上映中のWOWOWドラマとほぼ同時進行で読んでいたため
主人公の恩地元は上川隆也に、
行天四郎は渡部篤郎をおもいっきり浮かべながら読みました。


***

簡単にあらすじを。

国民航空の労働組合委員長の恩地は
整備員に死亡事故が起きるほど劣悪な労働環境を改善するため
経営陣と激しく対立し、首相フライト当日のストライキを敢行しますが
そのことによって、完全に「アカ」のレッテルを貼られてしまいます。

恩地のカリスマ性を恐れた会社は彼を中近東からアフリカへと、
内規を無視して10年もの間たらい回しにします。
一方、かつては組合副委員長として共に闘った行天でしたが、
現実主義者である彼は恩地と袂を分かち、出世コースへの道を歩み始めます。

恩地への差別が人道的に問題となり国会でも取り上げられ、
ようやく会社は彼を日本に帰すのです。
そんな時に起きたのが航空史上最大最悪のジャンボ機墜落事故。
「遺族係」を命じられた恩地は想像を絶する悲劇に直面し、苦悩します。

政府は組織の建て直しを図るべく、新会長として関西貿易の国見に白羽の矢を立て全権を委ねます。
国見は「会長室」の部長として恩地を呼び寄せ、組織にはびこる不正を調査させます。
国見と恩地は果敢に闘いを続けるのですが
政財界を巻き込んだ腐敗の構造はあまりにも深く巧妙に張り巡らされ、
突然国見は更迭され、恩地は再び追われるようにナイロビへと。
そしてその人事を言い渡したのは
かつての同志であり、常務にまで上り詰めた行天でした。

***


今までこの作品は日航ジャンボ機墜落事故に焦点を当てた小説だと思ってました。
もちろん大きな柱の一つではありますが
それだけではないんです。
「空の安全」をないがしろにして利潤追求を第一とした経営。
官・財が癒着する魑魅魍魎の組織。
たった一人の男を完膚なきまでに叩きのめす企業の実態が克明に描かれているます。
その結果、起こるべきして起こったのがあの大惨事だったのです。

正直、読んでいても出口のない憤りが腹にたまるばかりなんですよ。
常に真面目なものの前に立ちはだかる、汚い金と権力の世界。
知りたくない、知らぬが花。
どうせ今でもどこかでこんなことが日常茶飯時に行われているのかも。
やりきれなさに胸が震えました。

せめてラストで恩地を救ってあげてと願いましたが、切なすぎた。
こんな理不尽なことがあっていいのかという思いが拭えません。
「この地球上で最も危険で獰猛な動物」の中で生きるより
アフリカの大自然とサバンナの生き物たちに癒やされて欲しい。
そう思って自分の気持を納得させました(T_T)

重くて暗くて何をとってもハッピーにはなりませんが
絶対読んでおきたい名作の一つだと思いました。



奇しくも今日は御巣鷹山の墜落から31年です。
オリンピックの陰に隠れてニュースとしても小さな扱いでした。
「あとがき」のなかで山崎さんはこんなふうに書かれています。
「御巣鷹山事故のご遺族から、離断された無残な遺体、
遺体確認の地獄の苦しみ、突如としてもたらされた大きな喪失感、
電卓で生命の代価を算出される補償交渉の実際を伺うにつけ、
御巣鷹山事故をこのまま風化させてはならない、
事故の真相を書き留めて、無念の思いで亡くなられた
520名の声なき声に報いるべきだと覚悟を新たにした」
そんな思いが凝縮された作品であるとワタシも感じました。

ご遺族の方々には心から哀悼の意を表します。





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by noro2happy | 2016-08-12 21:13 | book