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なんと、主人公の田川信一警部補は
あの「震える牛」の刑事さんだったのね。
読み始めてオヤ?と思って過去感想文こちら★★★読んだらやっぱり。
食品業界の闇を暴いた田川刑事が
今度は派遣労働者の底辺にせまりましたよ。

発端は、身元不明のままになってる死亡者のリストを見たことから。
その男はNo.「903」として2年間、ファイルの中で放置されたままでした。
当初は練炭自殺と思われ処理されていたのですが、
田川はそこに殺人の痕跡を発見してしまうのです。

事件として正式に捜査に乗り出した田川は、
殺害された「903」が仲野定文という名で、沖縄の離島出身。
両親をなくし、貧しい祖父に育てられていましたが
成績は優秀で恩師や村人の助けで本土の高等専門学校へ行き、
その後各地の工場で派遣労働者として働いていたということがわかりました。

誰からも好かれ、貧しいながらも一生懸命生きようとした仲野が
なぜ自殺に見せかけて殺されなければならなかったか。
各工場を調べていくうちに田川はその背景にある派遣労働者の悲惨な状況に突き当たります。

この労働者たちの環境が、劣悪すぎて
本当にそうなのか?って思いたくなるほどです。
詐取される一方で、人というより部品のようにこき使われる。
人間とはいえないような生活を送っている人たちなんです。
いわゆるワタシたちの身近で、一緒に仕事をしている派遣社員とは、全く別物なんですよ。

なぜそんな現象が起きるのかといえば、
今の日本の産業界の閉鎖性と特殊性。
タイトルの「ガラパゴス」はここから来ているんです。

ただ、その辺りに関しては、ここで簡潔にお伝えするチカラがワタシにはありません。
確かに、一時小百合様のCMにもあった亀山工場でブイブイ言わせていた
(語弊があったらゴメンナサイ)
某電気会社があんなことになるなんて思いもよりませんでしたよね。
また、ハイブリッドカーがエコではないとか
そのメカニックについて説明もありますが
メカ音痴なワタシにはなんとなくしか理解できないから。
もう、この歪に関してはただただ驚くばかりです。

自動車会社の社長も、派遣会社の社長も、警視庁のスパイも
どいつもこいつも悪いやっちゃなんですが、
それでもなんでも読み始めたら止まらない。
ボロ雑巾のように捨てられた底辺で働く人たちの無念と、
田川の怒りがぐっと心に染みてきます。

ズッシリと読み応えがあってとても良かったですよー。

***

もうねぇ、沖縄好きにとしては、三線の音が聞こえてくるのよ。
メッチャ切ないの。
そこで本日は、Special Thanks BEGIN。
読み終えたあとたまらず聞きたくなった。
ウチナーグチバージョンの「涙そうそう」。
(単行本<上>100ページに登場)








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by noro2happy | 2016-08-03 19:48 | book

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岩手県雫石高原を目指していた大手進学塾・首都圏ゼミナールの
強化合宿バスがハイジャックされた。
人質は、小学5年生30名。
犯人は身代金10億円を要求する。
車内には停職中の警視庁捜査二課管理官、
田名部昭治も同乗していた。
大和新聞東北総局遊軍記者宮沢賢一郎は、
犯人グループが金融取引の専門知識を悪用して
身代金奪取を企てていることに気付く。
警視庁捜査一課特殊班捜査係(SIT)をも翻弄する
身代金受け渡しスキームを宮沢と田名部は阻止することができるのか。
バスは東北自動車道を北上、
タイムリミットが刻一刻と迫る!
(文庫版表紙裏より引用)




前回読んだ「共震」感想文★のダブル主人公
宮沢記者と田名部管理官のコンビです。
というか、もともと
「みちのく麺食い記者シリーズ」というのがあって
その5作目なんですね。
「共震」では田名部が宮沢のことを
「疫病神」と言っていましたが
なるほど、出だしで納得でした。www

高速を突っ走るバスジャック
なんか、映画でも観てるような感じ。
スピード感があってどんどん進みました。
でも、この作品の面白いところは、
犯人にとってバスジャックはあくまでも警察を欺く疑似餌。
本当の身代金受け渡しは水面下で行われているもう一つの誘拐事件。

で、その方法なんですが・・・
悲しい。
自分が経済オンチだということをすっかり忘れてた。
面白いんだけど、絶対にこのトリックを説明できない(T_T)
とにかく、元証券マンの犯人と
元経済部敏腕記者との知能比べということかな。

登場人物のキャラがそれぞれにステキ。
田名部は「共震」のイメージではクールだったけど
娘を思う優しいお父さんを見せてくれました。
そして、宮沢さん、イケメンなんですね。
エピローグでの宮沢さんを取り合う二人の女性の戦い?
に、ニヤニヤしました。
実は妻と、その座をおびやかそうとする田名部の小5の娘なんだけど。

「みちのく麺食い記者シリーズ」、
困ったときの予約本にリストイン決定です。





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by noro2happy | 2016-03-24 20:34 | book

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面白かったから読んで。
そんな軽いノリでは言えない。
重いんです。
でもおすすめです。
心がずーんと震えました。
まさしく共震。


東日本大震災から2年後、宮城県東松山市の仮設住宅で事件が起きました。
震災直後から被災地を飛び回り、ひたすら復興のために尽力してきた
宮城県庁職員の早坂が毒殺されたのです。
早坂を知る人は、あんなにいい人はいない。
恨みを買うような人ではないと、口をそろえて言います。
大和新聞社記者の宮沢もそう思った一人でした。

宮沢は真相を究明するために独自の捜査に乗り出します。
同時に警察側からは警視庁のキャリア、田名部も。
記者と警察がそれぞれの目線で真相に迫っていきます。
そこで明らかにされるのは
震災復興予算にたかるNPOを語る暴力団や悪徳企業でした。


一応、ミステリーではあるのですが
何となく、この人が犯人じゃないのー?
というのはわりと早い段階でわかります。
トリックは最後のほうで明かされますが
正直、そちらのほうもやや取ってつけたというか。
さらに、自供させるための取調室での裏ワザ?も
いくらなんでもという出来過ぎ感を拭えませんでした。
でも、そんなことなんてどーでもいい。

圧倒されるのは、ひたすら被災地の現実でした。
回想シーンの形で挟み込まれる震災直後の描写は生々しく、胸が痛すぎる。
読みながら全身が粟立ちました。

あとがきで、ミステリー部分を除けば、宮沢や田名部のエピソードは
著者自身の取材の中で得た実際の出来事と書いているように
言葉の一つ一つがグサグサと突き刺さる。
そして、復興を食い物にしようとするシロアリ共の実態!

とにかく三陸の現実に関心を持って欲しいという
筆者の熱い思いが全編にあふれていて、
5年という節目にこういう本に出会え、改めて「喝!」を入れられた思いでした。
本書はそれなりの心構えで読むべし!です。


「震える牛」感想文こちらにつづいて2作目ですが、
相場さん、ちょっと続けて読んでみようと思います。


おまけ:
中頃に出てくる「アテルイ」の話。
これはもしや、と思って参考文献をみたらやっぱり。
高橋克彦さんの「火怨 北の燿星アテルイ」だった感想文はこちら
大大大好きな本。

そうだ!蝦夷の子孫たちは負けないんだ!






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by noro2happy | 2016-03-15 19:59 | book

「震える牛」相場英雄

c0096685_2021646.jpg震える牛  ・・・・・1308

田川信一は迷宮入り濃厚な未解決事件ばかりを扱う、警視庁捜査一課継続捜査班に所属する刑事。
2年前に起きた「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の調査を命じられます。
殺害された被害者は、互いに面識のない獣医師と暴力団関係者。
事件当初はその手口から、金目当ての不良外国人の犯行と絞り込んでの捜査でしたが、
田川が地道な聞き込みを進めるうちに、その事件の初動捜査に問題があったことが明らかに。

被害者はたまたま居合わせたから殺害されたのではなく
そもそもがこの二人を殺すことが目的の計画殺人では?
田川は二人の繋がりを探るうちに大手スーパーマーケットと
食肉加工業者が関わっていることを突き止めます。

この先色付き文字は自分の備忘録なので、思いっきりネタバレ要注意!

犯人は大手スーパー「オックスマート」の御曹司・柏木信友。
片やBSE発症を公表すべきだと迫られて。
もう一方は、隠蔽しようとする信友を恐喝したため殺害に及ぶ。
しかし、それより悪い奴はミートステーションの八田だと思う。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

相性の問題かもしれませんが、相場さんの文章になかなか馴染めなかった。
登場人物も前のページを繰らないと、誰だったかわからない。
場面も頭に浮かばない。
その前に読んだ池井戸さんとは大違いでした。
もしや挫折か?と危ぶんだところでストーリーも佳境に入り
そこからは一気に読み終えました。

タイトルから想像できるようにBSEが鍵なんだけど
それよりももっと身近な食肉加工品が超怖い。
「雑巾」の表現がリアルすぎて、チェーン店のハンバーグとかステーキが食べられなくなった。
安い居酒屋メニューも、スーパーの格安惣菜も。
こんな値段で供給できるって、いったい原価はいくらよ?
なんてのは実際よくする話。
まさかここまでとは思いたくないけれど、やはりそれなりの理由があるわけよね・・・

あわせて大手ショッピングセンターの地方進出。
それに伴う地元商店街の苦境なども描かれています。
サスペンスというとっつきやすいジャンルで書かれていますが
主題は「食の安全問題」と「利益追求の資本原理」。
もちろん、書かれていることすべてが正しいとは思いませんが
安易に飛びつく消費者にも問題があることを筆者は訴えたいのでしょう。

ラスト、あのままめでたしとはなるまいと思いましたがやっぱり。
あんなからくりはたくさんあるんだろうねぁ。
この先は女性記者に不本意ながらバトンタッチってわけですがこれが現実か。
余韻を残してるのですが、ちょっとすっきりしない読後感ではありました。
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by noro2happy | 2013-02-20 20:50 | book