人気ブログランキング |

カテゴリ:book( 453 )


プラハの春〈上〉
春江 一也 / / 集英社
ISBN : 408747173X
スコア選択:


プラハの春〈下〉
春江 一也 / / 集英社
ISBN : 4087471748
スコア選択:



この連休を利用して春江一也著「プラハの春」を一気に読みました。
とにかくおもしろくて、何をおいても読んでしまいたかったのです。
文庫版では2000年3月に出版されたものです。
去年プラハという街を見て以来、ずっと読みたいと思っていたものでした。
なんで先にこの本を読んでからプラハに行かなかったのか激しく後悔しています。

1967年、当時チェコスロバキアは共産主義の抑圧から脱し、より自由な社会主義を目指す気運を高めつつありました。
そんななか、駆け出しの大使館員堀江亮介はある日偶然にも、車両故障で立ち往生していた母娘を助けたことから物語は始まります。
母親はカテリーナ・グレーべ。
東ドイツ(DDR)の反体制活動家として追われ、プラハに追放される身分でした。
二人は運命のように惹かれあうのですが、「プラハの春」という改革運動は、より強大な共産主義に押し潰され、亮介とカテリーナの愛も時代の奔流の中に呑み込まれていかざるを得ない状況となります。
カテリーナは「プラハの春」のシンボル的存在として、革命に身を投じるのですが、改革によるチェコスロバキアの自由化を恐れたソ連はそれを押しつぶそうと軍事介入してきます。
同時に二人の愛も破局へのカウントダウンを始めていきます。

実際に大使館に勤務していてこの改革運動の一部始終を見ていた著者が、自らの体験をもとに小説を書いたというだけあって、時代の動きも、登場人物の動きもリアリティにあふれ、生々しく、臨場感に溢れています。
東欧の歴史についてほとんど知らなかった私ですが、二人の恋愛物語をたどりながらその激動ぶりを知ることが出来ました。
プルタバ(モルダウ)河カレル橋、プラハ城、クリスマスマーケットで賑わっていたバーツラス広場、どこも私にとってはステキな旅の思い出の場所ですが、いずれも悲劇の舞台となったところばかりでした。
それもまだそれほど遠くない昔に。
歴史小説としても、恋愛物語としても十分堪能しました。
スメタナの交響詩「モルダウ」を聴きながら読んだら涙ものですね。
宝塚で何度も上演されているらしいのですが、そちらの方は疎いので全く知りませんでした。
ちなみに「プラハの春」の続編に当たる「ベルリンの秋」というのも出版されているそうで、こちらはカテリーナの忘れ形見シルビアとの話から始まるそうです。
ベルリンの壁崩壊へとまたまた東欧の激動が描かれているらしいので是非とも読んでみようと思っています。
by noro2happy | 2007-02-12 15:29 | book

松本哉さんが語る荷風

永井荷風の作品というのを一度も読んだことがありませんでした。
「墨東奇談」が頭に浮かぶくらいで、ましてや生き方なんぞに興味を持ったことがなかったのですが・・・
あることから「永井荷風という生き方」という本を手にし、はて「永井荷風という」ジャンルが確立するほどの行き方とは何ぞやという興味がわきました。
人づきあいを好まず、孤高の人ではありましたが、こと女性に関してはたいそうまめ。
歯に衣着せない物言いで物事の本質を鋭く突く反面、ねちねちと執念深い様子も伺えます
79歳で亡くなる前日までの42年間、一度も休むことなく書き続けられた日記にそんな荷風の本音が語られているんだよ、と分かりやすくかつ軽妙な筆致で解説しているのが本書です。
世が世なら荷風はblogキングと呼ばれたのではないでしょうかね。

著者の松本哉さんが昨年10月に癌で亡くなったことを、友人からの年賀状ではじめて知りました。
まだ63歳でした。
もう15年以上前ですが、その友人と私はタウン誌の編集に携わっており、当時松本さんには、下町を気ままにスケッチしていただきながらのエッセイの連載をお願いしていました。
飄々とした風貌から想像する通りの気負いのないやさしい文章(そう感じさせる文章を書くのがいかに難しいことか)、実に緻密に書き込んだスケッチ、毎回原稿が出来上がるのが楽しみでした。

本書のあとがきに「老いとともにやって来るのは楽しいことばかりではない。
数え上げるのもおぞましい不幸、病苦、忍耐・・・」と記され、平成18年盛夏となっていました。
そのころにはご自身もずいぶん辛かったのでしょうね。
それからわずか数ヶ月で亡くなってしまわれたんですね。
訃報を掲載した新聞の広告欄には本書の新刊広告が掲載されていたとか。
改めてご冥福をお祈りしたいと思います。
by noro2happy | 2007-01-26 21:45 | book

例によって朝早く目が覚めてしまったので、夕べから読みかけの本をつらつら読んでいると、永井荷風も最近の(当時の)言葉に不平たらたらだったというくだりが。
昨日の続きという事でご紹介します。

松本哉著「永井荷風という生き方」(集英社新書)
『昭和7年9月16日のことだが、荷風の耳に隣家のラジオの天気予報が聞こえてきた。「北東の風」とか「南東の風」、そして「愚図ツイタ天気」と言っているのが気に入らなかったらしい。すこぶる奇怪なりと言っている。
荷風によれば、呉等従来「北東」「南東」などの語を知らず、「東北」「東南」と言いなれている。また、愚図々々しているという言葉はあるが、愚図ついているという言葉は聞いたことがないと言うのだ・・・』

へぇー、という感じでした。
方角のいい方はともかくとして、ぐずついた空模様とか、子供がぐずってなんて普通に使っていましたが、荷風のように言葉を紡ぐことを生業としている人が言うんだからそうなんでしょうね。
イメージとしては分かりやすいんだけれどなぁ。
やっぱり言葉は生き物ですね。

ところで、著者の松本哉さんですが、10年と少し前くらいですか、一時お仕事でかかわったことがありました。
残念なことに昨年の10月に亡くなられまして、この作品が最後のものとなってしまいました。
このことについては、本を読み終えてから、いずれ改めて書きたいと思います。
永井荷風という生き方
松本 哉 / / 集英社
ISBN : 4087203646
スコア選択:
by noro2happy | 2007-01-18 19:30 | book