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母と娘の関係が赤裸々に・・・「シズコさん」

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これはシズコさんという人について書かれたノンフィクションです。
シズコさんは著者・佐野洋子さんの母親。
見栄っ張りで「ありがとう」と「ごめんなさい」を決して言ったことがないシズコさん。
そんな母親を、著者はいっぺんも好きになったことがないと書きます。
「母親の首を絞めたくなるという言葉を聞いても、素手で首を絞めようと思うだけ、その人のほうがましだ、私は素手で母の首に触るなんて嫌だ」とは。

「4歳くらいの時、手をつなごうと思って母さんの手に入れた瞬間、

チッと舌打ちして私の手をふりはらった。

私はその時、二度と手をつながないと決意した」


その時から著者とシズコさんのきつい母子関係が始まったと。
特に、戦後長男を病気で亡くしてからは、著者への虐待も始まり「母は兄の代わりに私に死んで欲しかったのだ」とまで思うようになります。
そんな環境の中、娘はひたすら母と距離を置き、会話をしないことで日々をやり過ごし、やがて一人で東京へ出ていきます。
離れた年月と実際の距離が二人の関係をホンの僅かですが縮めたころ、同居していた弟の嫁に追い出される形で東京へやってきたシズコさん。
母と娘は再び同じ屋根の下で暮らすようになるのです。

これだけみると、シズコさんという人はまるで悪人のようなのですが 社交的でやりくり上手で、若くして未亡人になってからは、細腕一つで4人の子供をすべて大学に出すほどの頑張り屋。
別の見方をすれば立派な女性ともいえるのです。
いわゆる今の世の、わが子を死に至らしめるまで放っておいたり、暴力をふるうというのとは違っています。
ただ、ただ、この母子は生まれついての相性が悪かったんだなーと感じるのです。

東京で暮らすようになったシズコさんは次第に呆け始めます。
娘は母親を老人介護施設に入所させることを決意します。
全財産を投げ出して入居させた高級老人ホームへ。
ホームに入った母親はさらに呆けがすすみ、一転していい人となり、これまで決して口にしなかった「ありがとう」「ごめんなさい」を連発するようになります。
著者はどうしても母を好きになれず、母を金で捨てたという自責の念で苦しみます。
ある日、振り払われた時から触ったことのない母の手に触ります。
これをきっかけに著者は時々母のベッドで添い寝をするようにもなったのです。
やがて娘の口からは、自分でも思いがけない言葉が出てきました。
それは「ごめんね」という贖罪の言葉でした。
号泣し、50年以上の年月自分を苦しめていた自責の念から解放されるのです。

母との関係をどこまでも突き詰めて書いた著者の姿に圧倒されました。
by noro2happy | 2008-08-24 19:29 | book