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「朝が来る」辻村深月(#1548)

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辻村さんの新刊です。

不妊治療との闘いに疲れた夫婦が選んだのは特別養子縁組。
子供を持てなかった者と
子供を手放さなくてはならなかった者のそれぞれの葛藤。
テーマは重いのですがスラスラと読めてしまいました。

以下、ネタバレあります。



物語の始まりは親子三人で穏やかに暮らす栗原家の描写から。
日常を揺さぶる1本の電話。
受話器から聞こえるのは
「子供を返してほしいんです」という声。
片倉ひかりと名乗った相手は
栗原夫妻にとって忘れられない名前。
息子朝斗の生みの親でした。

そんなサスペンスタッチの導入ですが
その後の展開は予想外のものでした。
前半で描かれているのは栗原夫妻と朝斗との心の絆と
それ以前の夫妻の不妊治療が克明に。
女性側の治療についてはよく読みますが
男性側については全く知らなかった。
描写が痛々しい(文字通り^^;)

後半からは、生みの母であるひかりの人生に移るのですが
ちょっと背伸びをしただけなのに
どんどん「普通」からはみ出してしまう過程が過酷でした。
わずか数年の間でここまで落ちてしまうのかと思うとやるせない。

最終章。
燃えカスのようになったひかりが
「あの家」でいたわられる存在として、
家族全員の母として居られるならもうそれで十分だという心情が、
すごく共感できました。

そして栗原母がひかりを探しだし
「やっとみつけた」というところで
みんなに朝が来たんだなというエンディング。
ホッとはしたもののちょっとあっけなく唐突って言う気がしなくも。
栗原夫妻の葛藤をもう少し描いて欲しかったと思うのは野暮なのかしら。




by noro2happy | 2015-09-14 20:40 | book