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貫井徳郎「夜想」

c0096685_201641100.jpg夜想  ・・・・・1319

事故で妻と娘をなくし、悲しみから這い上がれず、
ただ日々を惰性で生きている雪藤(ゆきとう)。
ある日雪藤は、自分が落とした定期券を拾ってくれた遙と出会います。
彼女はその定期券を渡しながら涙を流していたのです。
遥には人の持ち物に触れることで、その人の心を読むことができる特殊な能力がありました。
そして彼女もその能力ゆえに、常に孤独で辛い人生を歩んでいたのでした。
しかし一方で遥は、あからさまに能力を出さずその力を生かして
人の役に立ちたいと願っていました。

雪藤は自分が遥の涙によって救われたことに感謝して、なんとか彼女の力になりたいと考えます。
遥の癒しの力をもっと世間に知ってほしい。
そんな活動が、雪藤の生きる糧となっていくのです。

やがて遥の助言は傷ついた人々に安らぎを与えるようになり
雪藤だけでなく数人のボランティアのもとに組織は徐々に大きくなります。
私利私欲に走らないとする二人の思いとは別に
その姿はやがて新興宗教化へと変貌していくのです。

新興宗教が出来上がる過程が、以前読んだ篠田節子「仮想儀礼」(感想文はこちら)とは正反対。
でも内容的には同じように、組織の裏切り者や警察沙汰や、信者の狂気が
ドロドロと展開されるのかと思っていたところ、意外にそうでもなく
人は何によって救われるのかという、真面目なテーマに終始しました。

それだけに終盤の、雪藤の壊れ具合がちょっと怖かった。
同時にこれまで読んでいたのは、おっ?
そう思うと結構伏線が散りばめられていたんですね。

「悲しみが一生消えないほど心に食い込んでしまったなら、
悲しみとともに生きていくしかありません。
でも、悲しみから意識を逸らすことはできます」
一見突き放したような雪藤の言葉が胸に沁みました。
ラストが救われる展開だったので良かった。

しかし、今回ものめり込めるキャラはいなかったな。
遥のような特殊能力を持った人って実際にいるのかな。
持ち物から心を読むってちょっとリアルさからはかけ離れている気もするんだけど。
でも、最終的に社会福祉士というのは実に現実的だわ。
本書の場合はその辺りはあまり深く考えなくてもいいのかしら?


さぁー、次は池井戸さんだ♪
残念ながら、あの本ではないんだけどね(^_^;)
by noro2happy | 2013-07-22 20:39 | book