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「弥勒の月」あさのあつこ

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★★★★
「弥勒の月」   ・・・・・#1204

先日読んだ「燦」(感想文はこちら)
ワタシにとって初のあさのさんの時代小説でしたが
あさのさんにとってはこの「弥勒の月」こそが初時代モノだそうです。
本書があってこその「燦」であろうと理解し、興味を惹かれました。

満月の夜、女の身投げが目撃されます。
女は、小間物問屋の若おかみ・おりん。
調べに当たったのは同心信次郎と岡っ引の伊佐治。
一見ただの飛び込みのようにも思えたものの
おりんの夫の清之介は、この件を調べなおすよう、信次郎に申し立てます。
信次郎は清之介の隙のなさに不穏なものを感じます。
清之介に関心を覚えた信次郎は伊佐治とともに事件を追い始めるのですが
ふたりをあざ笑うかのように次々不穏な死や殺人事件が起こります。
おりんは誰かに殺されたのか、
だとしたら、その理由は・・・
そして第二、第三の死体が物語るものとは。

まぁこんな内容なんですが、
ミステリーとしての面白さ以上に
特にキャラ読みのワタシにとっては
主要3人のいずれもが個性豊かで興味がつきませんでした。

先ずは信次郎。
まだ若いが、間違いなく切れ者。
しかし、狡猾だし非情で傲慢。
日に何度も気分が変わるお天気屋で予断を許さない男。
こう書いてしまうと、いかにも付き合いにくい嫌なやつなんだけど
そうともいえないのが、この人の魅力、かな。

一方、そんな信次郎に仕える伊佐治はといえば
信次郎の父親の代からの岡っ引。
女房に「瓦屋根より硬い」といわれるほどの堅物。
先代からは全幅の信頼を得、伊佐治も心から仕えることができたのだけど
信次郎に対してはいまだに自分でもどう対処して良いのか分からない部分も。
この二人、性格的には両極端ですが、読者にとっては絶妙のコンビネーションとも見えるんだけど。

最後は清之介。
まさに「闇」から生まれたような生い立ちなのですが
商人として生まれ変わって幸せをつかんだ矢先・・・
彼の中で表と裏がせめぎ会うところの心理描写などが絶妙です。
一番心惹かれたキャラクターかな。

捕物帖として読むよりは人としての生き方みたいなものを
ジックリと味わえるような時代小説。
人の計り知れない心の奥底を映し出す、男たちの苦悩と再生の物語。

これ、いいわぁ。
どうやら続きが2巻出ているようで即予約。
あさのさんの時代小説、メチャお気に入りになりました。

ついでながら、舞台となる江戸の町がこれまた
今住んでるところの目と鼻の先。
馴染みがあるので親近感もわくってもんで。
by noro2happy | 2012-01-22 21:13 | book