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奥田英朗「オリンピックの身代金」

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★★★★☆
オリンピックの身代金   ・・・・・#1144

昭和39年夏。
10月に開催されるオリンピックに向け、
世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。
この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。
そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。
同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた。
しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。
警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、
一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ・・・。
(ハードカバー帯から)


おもしろかったなぁ。
奥田さんといえばライト系伊良部と、最近読んだ純平だったから
こんな重厚かつシリアスな小説を読めるなんて思いもしなかった。
無知無知、ヒジョーに恥ずかしぃー。
ただ、前半の勢いが終盤にやや衰えてしまったように感じたことが唯一残念でした。


前代未聞の身代金奪取を企てる大学院生・島崎国男。
その事件の捜査を行う警察官落合昌夫。
オリンピック最高警備本部の幕僚長の息子であり、島崎とは東大同級生の須賀忠。
若干のタイムラグを保ちながら、物語はそれぞれの視点で綴られていきます。

秋田の貧しい小作農家から東京へ出稼ぎに出ていた兄が、
オリンピックの工事現場で突然死したことがきっかけで
島崎は期間限定で、飯場の世界に足を踏み入れることになります。
彼がそこで知ったのは、あまりに理不尽な格差社会。
東京の繁栄を尻目に、全身塩まみれになりながら
ただひたすら肉体を捧げるだけしかない底辺の男たちの実情。
やり場のない憤りは、やがて国家権力へと向かっていくのですが
このあたりの心情がとっても丁寧に描かれていて、
ついつい島崎に感情移入してしまいました。 

昭和39年ってこんなだったんだねぇ。
オリンピックの成功は全国民の悲願。
そのためにはどんなことでも我慢するってムード一色。
リアルタイムと言うには幼すぎたけれど
街の様子、言葉遣い、生活感、実名登場の皆さん。
その時代、場所に居たものとしては共感や、懐かしさや
いろんな思いが胸に去来しました。

今後また東京でオリンピックが開催されたとしても
ここまでの盛り上がり絶対にはないだろうな。
奇しくも明日は開会式が行われた10月10日。

 五機のジェット戦闘機が編隊を組んで現れた。
 綺麗なカーブを描いて隊がばらけた。
 そして機体の尻から煙を吐いて、
 それぞれが大きな輪を空に描き始めた。
 一分ほどで五輪のマークが青空に浮かびあがった。


11歳の誕生日にこの目で見た光景は今でも鮮明に覚えています。

by noro2happy | 2011-10-09 17:56 | book