些細なモラル違反が・・・乱反射

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★★★★
貫井徳郎:著「乱反射」

罪にならないほどの些細な法律違反(ん?これってヘンな言葉か)。
みんなやってるし、というモラル違反。
誰にも覚えがあるはず。
大きな声ではいえませんが、ワタシもすいてる道路での信号無視は日常茶飯事。
でもそれらの行為が思いもかけないところで1点に交わり、見知らぬ誰かの命を奪っていたとしたら・・・怖っ。

以下、ネタバレです。

新聞記者の加山聡:久々にとった連休で妻と子どもと共にドライブ旅行へ行く朝。
この日はごみの日ではなかったが、生ごみを何日も家に放置しておくわけにいかず、妻に促され今回だけと言いながら、ドライブインのゴミ箱に家ゴミを捨てる。

「良識派」マダムの田丸ハナ:道路の拡幅工事のために街路樹が伐採されることを知り憤慨する。
人の勝手な都合で樹木の命を絶ってもいいのかと反対運動を行う。

定年後犬を飼う三隅幸造:犬は散歩のとき、毎回1本の街路樹の下でフンをするが、腰をかがめると激痛が走るため、毎回フンをそのままにしている。

車庫入れが苦手なOL榎田克子:自宅の車庫は比較的交通量の多い道路に面していて、車を路上に出すのが難しい。
にもかかわらず、家族の希望でさらに大型の車に買い換えることになり、車庫入れがますますプレッシャーとなっている。

すぐ風邪をひく大学生安西寛:昼間の病院は混んでいることを知っているので、救急ではないがあえていつも夜間診療を利用している。

街路樹診断を請け負う足達道洋:息子が誕生したときから突然、異常ともいえる潔癖症になり素手で物に触れなくなる。
常に除菌シートを持ち歩き、軍手を何枚も取り替えながら仕事をしている。
心の病のことは妻以外誰にも打ち明けられないでいる。

その他:怠慢なアルバイト医師、無気力な役所職員、他

-44章から始まる前半では、これらの人々の日常が描かれていきます。
そして事件がおきた0から後半は、彼らがどのように一人の人間の死に関わっていくかが明らかにされます。

亡くなった人とは加山の2歳になる一人息子健太。
ベビーカーで散歩中、強風で倒れた街路樹の下敷きになってしまいます。
我が子はなぜ死ななくてはならなかったか。
原因を探っていくうちに、加山はさまざまな人々の些細なモラル違反が複合していたと分かります。
加山は彼らを糾弾しようとするのですが、フト気づいてしまうのです。
自分も1回だけと言い訳しながら、ドライブインでゴミを捨てたことを。
「・・・おれだったのか。おれが健太を殺したのか」

ある意味恐怖小説、あるいは“たられば”小説か。
このお話では、健太の死に関わった人々が自分がどう関与したかを知ってしまうのですが、実際の場合はそういうことはほとんどないと思う。
だからこそ、怖いのよね。
知らずに連鎖の一員になっているのかと思うと。
にもかかわらず、相変わらずいけないなーと思いつつ些細なモラル違反をしてしまっているワタシです。

登場人物が多くてはじめのうちは戸惑いましたが、これがどうつながるんだろうと読み進むうちに一気に読んでしまいました。
「乱反射」というタイトルが実にぴったりなお話でした。
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by noro2happy | 2010-03-07 21:21 | book