貫井徳郎「慟哭」

c0096685_2144343.jpg慟哭  ・・・・・1321

貫井さんのデビュー作です。
確か、めちゃ重い話しであるということだけが記憶にあって
(ま、このタイトルで笑えることはないでしょうけど)
ずっとスルーしてました。
でも先日「夜想」(感想文はこちら)を読んでからというもの
なーんか気になってしまいまして。
やっぱり予約してしまった。

そしたらうかつでした。
この作品、暗いだけじゃなくて、衝撃のどんでん返しだったんです。
あらかじめわかっていたら、
なんか探してやろうって心構えで読むのですが
ついつい事件を追いかけて一気読みしてしまい
そこまで考える余裕がなかった。
まぁ、そのお陰で十分びっくりできたんですけど。

以下、備忘録及びネタバレです。

佐伯と松本の二人の行動が章替りで交互に展開されます。

佐伯はキャリアのエリート捜査一課長。
連続幼女殺害事件を追っています。
一向に犯人を検挙できず、世間の風当たりは警察に厳しくなります。
佐伯は犯人を挑発するメッセージを発信。
そこで犯人は佐伯の娘の殺害計画を立てます。

一方の松本。
人生を捨て、廃人同様の生活を送っていますが
心の闇を埋めたくて、宗教に救いを求めるようになります。
彼の闇の原因は一人娘を殺されたことによるものですが
そのことを読者がわかるのはかなり後のことです。
やがて松本は魔術によって娘は蘇ると信じるようになり
復活儀式のいけにえにするため幼女をさらうのです。

トリックのヒントは時間軸。
ずんずんと読み進んでしまうと作者のミスリードに引っかかり
このズレに気がつかない。
ワタシのことですが(-_-;)
前半の連続殺人、つまり佐伯の娘が殺害されるまでと
後半の連続殺人には1年の間があったんですね。
とすれば、佐伯=松本の図式は分かるんですけど・・・

苗字に関しては一番初めから
佐伯が警察庁長官の婿養子であることが明かされてます。

こうネタばらしをしてしまうと単純なんだけどね。
悔しいけど気がつかなかった。
しかし、作者はミステリー、謎解きというより
「夜想」同様、心の穴を埋めるすべはあるのかってことを
書きたかったのだと思います。
というか、本書あっての「夜想」なんですけどね。

ただ、ひとつ引っかかったのは
佐伯と生前の娘との間に、父娘の絆を感じさせるものがまったくなくて。
むしろ、幼い頃から孤高な行き方を思うと
こういう事件は一番起こしにくいタイプのような人間に見えるのですが。

そして、子供を殺された親の「慟哭」を誰よりも知っているはずなのに、
それがわからなくなるというのは
人格を失った狂人としか思えません。
でも、それにしては逮捕されてからの自供が淡々と
理路整然としすぎているところに矛盾を感じます。

結局佐伯の一人娘を殺した犯人はどこかで笑っている・・・
驚かされはするけど、救いがないのですよ。
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by noro2happy | 2013-08-05 21:54 | book | Comments(0)